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『自然 まだ見ぬ記憶へ』

ロダン展@兵庫県立美術館にいってきた。収穫だったのは、ロダンがいわばモジュール的発想の作家だったという発見である。人体の部分(とくには手あるいは四肢)を別の人体に、またその人体を二つ三つ組み合わせてみたり、もっと配置して群像にしてみたり。…

『イメージ、それでもなお』

伝達不可能なものを、それでも伝達するために、どうするか。イメージに対する「不可視性」についての過度な一般化に抗して、イメージ=ヴェールではなく、イメージ=裂け目のほうに賭けてみよう、とディディ=ユベルマンはいう。たとえば地獄(ビルケナウ絶滅…

『ボクシングはなぜ合法化されたのか』

夕刻からの会議のあと、同僚である著者から手渡しでご恵贈いただいた本。もう少していねいに読んでからの感想は、ご本人に直接お伝えするとして、まずは紹介しておきたい。 イギリスにおけるスポーツの近代化を同国の刑法との歴史的な関わりを通じて論じてい…

『近代化と世間』、人間狼、フーゴー

個人、自然、公共性、アジール、聖なるものへの憧憬などの考察を手がかりにして西欧社会の特性を論じ、そこでの賤民の成立と解体を社会史的視点から概括的に辿る第一章、日本の「世間」が分析される第二章、東西の歴史学の現状が比較検討される第三章、トイ…

[memo]『パースの生涯』

もうひとりの「チャールズ」についてW・H・オーデンは次のように書いていた。〔これはパースと彼の父親との関係の反映の一つでもある? では母親との関係は?〕 ダンディー……とは金や暇という何らかの幸運な贈り物を必要とする点で詩の英雄のようなもので…

岡田温司『モランディとその時代』

通史的にではなくエピソードをトピックス的に採りあげながら進められる「呪われたモノグラフ」「戦火の彼方」「リアリズムと抽象主義のあいだ」「抹殺された過去」の四章が、モランディ自身の静物画のなかの壺や壜のように並べられている。光の強さやあて方…

岡田温司『処女懐胎』

見えないものが見えるようになり、手の届かないものが手の届くものになりうる。他の一神教とはちがって、多くの偶像を生み出すことになった、キリスト教の根底にある「受肉」という考え方が、なんとも興味深い。本書では、キリストの「家族」が、ではどのよ…

『新編百花譜百選』

新編 百花譜百選 (岩波文庫)作者: 木下杢太郎,前川誠郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/01/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (9件) を見る 通勤電車のなかでも気兼ねなく開ける絵本?を購入。

『日本の思想』

彼女が「である」ことから手に入れるモノやコトよりも、彼女が「になる」ことに向けて「する」ことに、わたしがもっと目を向けて見ていたら、また違ったところが、きっと見えただろう。 日本の思想 (岩波新書)作者: 丸山真男出版社/メーカー: 岩波書店発売日…

[memo]『幼児期と歴史』

幼児期と歴史―経験の破壊と歴史の起源作者: ジョルジョアガンベン,Giorgio Agamben,上村忠男出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/01/26メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 23回この商品を含むブログ (22件) を見る じっさいにも、わたしたちがインファ…

『石の葬式』

石の葬式作者: パノスカルネジス,Panos Karnezis,岩本正恵出版社/メーカー: 白水社発売日: 2006/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る パノス・カルネジス(1967〜)は工学の博士号をもっていて、鉄鋼会社で働いた…

『恥辱』

恥辱にまみれているのは、彼女たちだけではない。忍びよる老いと、それでも枯れることのない欲望を同時に抱えながら、古い世界に戻るわけにもいかず、生きていくべき新しい場所を見つけなければならない姉や父もまたそうなのだ(もちろん二人には違いもある…

『わたしを離さないで』

わたしを離さないで作者: カズオイシグロ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/04/22メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 568回この商品を含むブログ (547件) を見る だれかが自分の名前を名乗って何ごとかを語ろうと話しはじめます。キャシー。もちろん…

『西田幾多郎』

西田幾多郎 (KAWADE道の手帖)出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/06/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (4件) を見る 安藤礼二の「入門」を読んで「潜在性」「出来事」(ドゥルーズ)と「場所」「述語」(西田)が対…

『思想としての〈共和国〉』

思想としての“共和国”―日本のデモクラシーのために作者: レジスドゥブレ,三浦信孝,樋口陽一,水林章,R´egis Debray出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2006/07メディア: 単行本 クリック: 116回この商品を含むブログ (23件) を見る レジス・ドゥブレの'89年…

『西田幾多郎』

とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)" title="西田幾多郎 とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)">西田幾多郎 とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)作者: 永井均出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2006/11/28メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人…

『黄色い雨』

黄色い雨作者: フリオリャマサーレス,Julio Llamazares,木村榮一出版社/メーカー: ソニーマガジンズ発売日: 2005/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 16回この商品を含むブログ (38件) を見る 独りで死を迎えようとしているあなたの記憶のなかのいちばん…

『西田幾多郎の生命哲学』

西田幾多郎の生命哲学 (講談社現代新書)作者: 檜垣立哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/01/19メディア: 新書購入: 3人 クリック: 43回この商品を含むブログ (28件) を見る 忘れている身体を思い出させてくれることば。しかし考えてみればおかしなもので…

『ニーチェ』

動じないことが強さだとしても、やはり無反応ではなく誰かがそれを「始まり」だと認めてその声を「最小の耳」で聞き届けること。しかし… (引用は下の本p161からの孫引き) ニーチェ―〈永劫回帰〉という迷宮 (講談社選書メチエ (165))作者: 須藤訓任出版社/…

『カヴァフィス全詩集』

この詩は同じ訳者(中井久夫)による「現代ギリシャ詩選」にもあるが、やはりこちらから引く。 カヴァフィス全詩集作者: コンスタンディノス・ペトルゥカヴァフィス,中井久夫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1997/10メディア: 単行本 クリック: 3回この…

『生命と現実』

この本、精神医学者と哲学者との関心のずれが顕れていて面白い。他者、個別性、性をめぐっての対話から引いてからめてみる。生命と現実 木村敏との対話作者: 木村敏,檜垣立哉出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2006/10/19メディア: 単行本購入: 1人 クリ…

『じぶん・この不思議な存在』

顔が呼びかけや訴えとしての〈顔〉として迫ってくるような映画は、しんどい気もする(ほんとうはそれを求めているだけに?)。画面に映るあれやこれやの物量で圧倒し、その速度で幻惑し、あるいはカットで転調をくり返したりしながら、顔が必要以上に〈顔〉…

『小津安二郎文壇交遊録』

小津安二郎文壇交遊録 (中公新書)作者: 貴田庄出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/10/01メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (15件) を見るmemo:以下、すべて孫引き 映画といふものは映画のために拵へたものが結局いちばん面白いね。…

『パレスチナ・ナウ』

パレスチナ・ナウ―戦争・映画・人間作者: 四方田犬彦出版社/メーカー: 作品社発売日: 2006/11/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (19件) を見る memo:それぞれ『ミュンヘン』『ライフ・イズ・ミラクル』『エドワード・サイード…

『ベルクソン』

ベルクソン―“あいだ”の哲学の視点から (岩波新書)作者: 篠原資明出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/10/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (28件) を見る memo すでに触れたとおり、仏とそれ以外の生物とで同じ要素が共有さ…

『ソクーロフとの対話』

ソクーロフとの対話―魂の声、物質の夢作者: アレクサンドル・ニコラエヴィチソクーロフ,前田英樹,児島宏子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1996/06メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (7件) を見る 一度も秩序のある知的な権力をもっ…

『森の中で』

読者になる/他人になるという不可能な夢 わたしなりに「不正確に反復」を試みれば 答えは ただ 沈黙、 沈黙 しか ないことを 知らないで−− 私は なおも 歩む、 沈黙を 信じないで、 むなしく 事物 に 触れながら 触れながら そして 凭れながら−− (「森の中…

『パースの宇宙論』

パースの宇宙論作者: 伊藤邦武出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/09/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (11件) を見る プラトンの洞窟やミノタウルスの迷宮の存在を実感することになった鉱山体験の二、三週後にエマソン…

『倫理という力』

倫理という力 (講談社現代新書)作者: 前田英樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/03/19メディア: 新書購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (12件) を見る 躾と感化とは、子供が教育される時の切り離せない二つの側面になる。個々の人間が、自然…

『アーキペラゴ』

アーキペラゴ―群島としての世界へ作者: 今福竜太,吉増剛造出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/06/29メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (20件) を見る 今福 …… ところがインディアンが子供に名前をつける時というのは、母親の…