2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

岡田温司『処女懐胎』

見えないものが見えるようになり、手の届かないものが手の届くものになりうる。他の一神教とはちがって、多くの偶像を生み出すことになった、キリスト教の根底にある「受肉」という考え方が、なんとも興味深い。本書では、キリストの「家族」が、ではどのよ…

『カポーティ』

見逃していた映画@シネ・ピピア(「2006年映画傑作選」を上映中)。他に選ばれているのは、「ゆれる」「時をかける少女」「マッチポイント」「間宮兄弟」「太陽」「リトルランナー」「紙屋悦子の青春」「雪に願うこと」「春がくれば」「トンマッコルへよう…

「夢の美術館:大阪コレクションズ」展

国立国際美術館を訪ねる。ジョルジョ・モランディ(「静物」1952年 油彩 カンバス 33.2×45.0 国立国際美術館所蔵、「茶碗のある静物」1954年 油彩 カンバス 28.5×66.5 サントリーミュージアム[天保山]所蔵)の2作品があり、見入ってしまう(添えた画像は1…

『ハリーの災難 [DVD]』

DVD

はじめて見る。もはや口を利かないボディが主人公のブラック・コメディ。生きている人間だけが自分を守ろうとする。その間の抜けた奇妙に平静な狼狽ぶりが、なんとも可笑しい。トラッキングとズーミングを併用した「めまい」のようなショットはないが、大胆…

『善き人のためのソナタ Das Leben Der Anderen』

@シネ・リーブル梅田。漱石『行人』に、Hさんがドイツ語の諺「Keine Bruecke fuehrt von Mensch zu Mensch.(人から人へ掛け渡す橋はない)」を告げる場面がある。それに対して一郎は、ニーチェの「ツァラトゥストラ」から借りた言葉「Einsamkeit, du mein…

四方田犬彦「先生とわたし」(『新潮』3月号)

読了。「すべてデタラメ」。この言葉をしかし、自分に言ってくれる人はもういない。わたし自身に引きつけて読むと、感想はそうなる。もっとも、わたしの場合、師に嫉妬されるほどの弟子では、決してなかった。あるいは、わたしの師は、ここでジョージ・スタ…

『新編百花譜百選』

新編 百花譜百選 (岩波文庫)作者: 木下杢太郎,前川誠郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/01/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (9件) を見る 通勤電車のなかでも気兼ねなく開ける絵本?を購入。

『ふたりの5つの分かれ路 [DVD]』

DVD

後戻りができないということ。それは、わたしたちが日々を生きるうえで、いつもそれとなく確かめてはいることなのだろう。映画は、そうしたありふれた日常の時間(ふたりの出会いから離婚まで)をまとまりのある5つの場面に切り取り、それらをしかし後ろ向…

『夢ゼロ夜』

こんな夢を見た。 車を運転してゐる。さうして山陽自動車道を走つてゐる。明石大橋を渡り、津名・一宮インターを降りて、しばらく陽光を照り返す海原を左手に見ながら、国道28号線を下つてゐた。すると隣の紳士がはじめて口を利いた。 「(覆された宝石)の…

『日本の思想』

彼女が「である」ことから手に入れるモノやコトよりも、彼女が「になる」ことに向けて「する」ことに、わたしがもっと目を向けて見ていたら、また違ったところが、きっと見えただろう。 日本の思想 (岩波新書)作者: 丸山真男出版社/メーカー: 岩波書店発売日…

[book]『マリー・アントワネット』追記、『ヘーゲル読解入門』、『東京から考える』

[映画のあとの、三人のまとまらない会話]K「フランス語、聞きたかったなぁ」 S「ちょっと遊園地っぽくなかった?」 T「結婚させられた少女が、なんとか母親になれて、自ら妻にもなって、やっと自分自身になることができたって感じにはなってたよね」 S…

『マリー・アントワネット』

@シネ・モザイク。MSK&MKKと。これは「ベルばら」ではない。宮殿に庭園、馬車に犬、家具に調度、衣装に靴、音楽にダンス、お菓子にケーキ(衣装以下は、けっこう現代風)と色彩も運動も満載の画面だが、近代的な人間の内面とか苦悩とか、そんなもの…

『鉄コン筋クリート』

鉄コン筋クリートall in one (ビッグコミックススペシャル)作者: 松本大洋出版社/メーカー: 小学館発売日: 2006/12/15メディア: コミック購入: 5人 クリック: 47回この商品を含むブログ (101件) を見る 映画だけを見ていて、気になっていた原作をはじめて読…

『ユメ十夜』

一夜ずつ十人の監督が映像化した十夜を並べたオムニバス作品。ビッグ・ネームが100年前(明治四十一年)に書いたテキストを映画はどのように換骨奪胎しているか。それが気になって見てきた。もちろん明治の時間や夢の空間を映像化してみせるのは、夢をユメと…

[memo]『幼児期と歴史』

幼児期と歴史―経験の破壊と歴史の起源作者: ジョルジョアガンベン,Giorgio Agamben,上村忠男出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/01/26メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 23回この商品を含むブログ (22件) を見る じっさいにも、わたしたちがインファ…