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家族とは、互いを理解し合うとは、をあらためて考えさせてくれる映画。たまたまふりかかった条件の下で、自分も他人も否定することなく、それぞれのらしさを生かしながら、互いに共存の道を探ろうとする無様な姿が知的でかっこいい。亡くなった人と言葉を交…
バベル スタンダードエディション [DVD]出版社/メーカー: ギャガ・コミュニケーションズ発売日: 2007/11/02メディア: DVD購入: 1人 クリック: 92回この商品を含むブログ (261件) を見る だが、言語が存在する以上、ひとは自らの苦痛であれ、それを間違った名…
神の声を聴くBeastと野獣の耳をよく知るBeauty。しかし世代の開きなのか、男女の差異なのか、それとも才能の多寡なのか(そのどれでもないような気もするけれど、とにかく)、彼らには容易には越えられない懸隔*1があって、それを皮一枚残したままの近接であ…
三人の名付親 [DVD]出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ発売日: 2004/07/09メディア: DVD クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る
上の映画を見た人は、この映画を思い出したかもしれない。荒野を彷徨うことになる若者二人が、最初に見知らぬ家族連れと挨拶だけを交わしてすれ違う場面がある。最後に残った一人の若者が、とうとう道路に出ることができて、拾ってもらって乗っているのは乗…
ラマ(ロマ)ってジタンとかツィゴイネルと呼ばれている人たちの自称のあのロマ? 放浪する人々? 2体の電気ロマが人間になる夢を見て…。ダフト・パンク エレクトロマ [DVD]出版社/メーカー: エイベックス・ピクチャーズ発売日: 2007/09/26メディア: DVD ク…
ダイアナが亡くなるシーンも、大鹿が撃たれる映像もない。女王が立派な角をもった牡鹿と再会するのは、すでに首(王室?)が逆さに吊られた胴体(民衆・民意?)から切り離された後である。ブレアに忠告された女王が一人で決断に苦しむシーンもない。彼女が…
勤め先を突然解雇された初老の男ビジェガスはひょんなことから大きな白いドゴ犬ボンボンを飼うことになる。人々との出会いの数々、仮住まいと移動が続く浮浪の生活をともにすることで、ビジェガスとボンボンは次第に深い絆で結ばれていく。犬や猫と暮らすと…
イギリスでテレビドラマとして放映された作品で前編・後編の2枚組です。日本では2006年にNHK(BS-Hi)で放映されたようです。ヴァージン・クィーンである自身の大きな振幅のある愛憎と隣国の脅威や取り巻きの陰謀に悩まされた生涯を史実に忠実に描いているよ…
クロッシングには、航海や横断という意味以外に、反対や妨害といった意味もあったはず。古今を、また東西を、橋渡しする交差と衝突の都市イスタンブールの音楽シーンを取材したドキュメンタリー。ドイツの前衛バンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテ…
冴えない教育実習生ダニエル(モーリッツ・ブライプトロイ)は、彼を密かに慕う露店商のユーリ(クリスティアーネ・パウル)から太陽の指輪を売りつけられ、パーティに誘われる。「彼は出てくるのを待ってる何かをその奥深くに持ってるのよ」。しかしそこで…
『ヤンヤン 夏の想い出』 「私たちは似ている」と大田(映画の表記では一成尾形)がNJ(ウー・ニェンツェン 呉南峻)に言うのだが、嘘のつけない人間の苦しさや美しさをこんなふうにも描けるのだな。木漏れ日。家具などの部屋の調度。風船に水を入れること…
『ライアー』 騙し騙されるスリルよりは自己陶酔の、アブサンによる泥酔の、発作による前後不覚の感じがうまく出ている。呼吸や脈拍や血圧の変化を拾うポリグラフの針に代表されるいかにもアナログな動きが、しかし対照的に、離散的なかたちで結果する人間の…
『野いちご』 終わりではなく始まりをこそ描いた映画だろう。死を目前にした人間がやっと?変わる、その変化の兆しを描いて、見終わったあと、夢見のよかった目覚めを思わせてくれるような。老医師が名誉博士号授与式参列のためストックホルムからルンドへ自…
この恥ずかしさは、やはり私の恥ずかしさなのだろう。人を励ますのは難しいけれど、励まされるのは、やはりうれしい。
なんで浜に打ちあげられるなんてヘマをやってしまったんだろう。目の後ろに銛を刺されたあの70年前のことは別としても、まったく同じ浜に再び、なんてね。それじゃあ、自分の運を試してでもいるのかって訊かれてもしょうがない。でも神秘が謎として置かれて…
少年はその課程の半ばで高専の門を出て行った。一歩青年に近づいた顔をして。これが希望的観測でないことを祈る。 少年はふつうには大人のような力をもたない。しかしときに(とくには生き抜くという場面において)大人以上の力をもつことがある。一人の少年…
仮面は、よく知られているように、見せると同時に隠すものである。曝されていたものは覆われて、潜んでいたものが露わになる。『しあわせ』という映画でいえば、主人公(たち)がずっと撮り続けていたヴィデオ映像が再生されるとき、それはちょうど仮面と同…
女は死なない。「誰も見とらんかったら何も起こらんのと一緒や」。死ななかった女は犯される。田舎を出た女は再び犯される。女は問いかける。犯人に刑事に。女は問いかける。犯人の妻であり中学校の恩師でもある女に。「ワイはその戸籍を呑んだんか。ほんな…
オープニングは刑務所の囚人、大名大作(伊藤雄之助)と田ノ上太郎(砂塚秀夫)のふたりによる狂言もどき。やがては親分と乾分になる二人の、ぐいぐいと物語世界に引きこんでいくセリフ、音楽、身体の所作がすばらしい。カット、クロースアップ、足さばき。…
海岸砂丘の最初の場面からヴェトナム戦争の有名なある写真が頭に浮かんだのだが、最後にやっぱり出てきた。写真ではなく途轍もなく大きなペンキ絵としてだが、それが回り舞台の書き割りになっていて、手前では映画の登場人物たちの処刑が、実際にその絵をな…
ダニエル・ジョンストンが初恋の女性の映像をスーパー8に収めていたのを思い出して、そういえばこの映画の青年も思いを寄せる女性を手回しのカメラでフィルムに収めていたなと。少し前に見た映画。人工の光に浮かぶのは埃なのか、それとも何かの粉末なのか*…
この映画のいいところは、史実から自由になって、しかし「力道山」をたんなる時代の英雄としても、また闇の力に抗いきれなかった悲劇のヒーローとしても描かなかったところだと思う。もちろん個人の性格のせいだとも、その出自のせいだとも、時代の制約のせ…
戦時の公的の名のもとに行使される暴力はしかし、平時の私的な領域においてこそ傷痕を残すものなのかもしれない。監督は『マドモワゼル』のフィリップ・リオレ。始めと終わりの現在時でもって過去をサンドウィッチにしているのは前作と同じ趣向。その『マド…
監督は『愛の嵐』『ルー・サロメ/善悪の彼岸』『フランチェスコ』『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』などのリリアーナ・カヴァーニ。彼女も当年とって70歳。原作パトリシア・ハイスミス『アメリカの友人』は未読、これを機会に見てみたいと思うが、ヴ…
ずいぶん久しぶりの再見。伝記的事実に近いのは、アンディ・ガルシア主演『モディリアーニ 真実の愛』のほうだろうか。ミック・デイヴィス監督は、ユダヤ系イタリア人画家の生涯を、ピカソとの確執とカトリック娘ジャンヌとの悲劇的恋愛を軸にして描いたが、…
トルコ系ドイツ人たちが主人公のタフな恋愛劇。ライヴハウスで掃除係をしている中年男はアル中でヤク中だ。意識の朦朧は男の絶望を押しとどめきれない。自分を自動車ごと壁にぶつけるが死ねない。運び込まれた入院先で、方法はいろいろあるのに、どうして壁…
最近見たもの。 『カフカの「城」』(1997年、ミヒャエル・ハネケ)……延々と中絶。右から左へ、左から右へ。画面を横切り続ける測量技師K。開けのない限られた空間を切り取るカメラはまた移動と固定のバランスの妙でもって空虚で不条理な世界を描出する。小…
劇場公開時に見逃していた映画。毒の効いたコメディ。麗らかに晴れた昼下がりの川縁、のんびりとした出だしからまもなく、怪物が現れ、あっさりとその全容をさらけだしたのには驚いたが、やがて漢江の濁流は降りしきる雨を招き、かすかに届けられた声は地下…
実話(1993-1996年のココシリ山岳隊 Kekexili Mountain Patrol−チベットカモシカの密猟者たちを追う民間パトロール隊の活動)に基づいた映画。その17日間に及ぶ追跡劇は、厳しい生存条件の下での矛盾に満ちた赤裸な人間(集団)の姿を浮き彫りにする。実際に…