『ライアー』『トーマス・クラウン・アフェアー』『ライアー ライアー』

騙し騙されるスリルよりは自己陶酔の、アブサンによる泥酔の、発作による前後不覚の感じがうまく出ている。呼吸や脈拍や血圧の変化を拾うポリグラフの針に代表されるいかにもアナログな動きが、しかし対照的に、離散的なかたちで結果する人間の行動の、そのディジタル的とでもいうべき現れを、むしろ際立たせているようだ。原題は『Deceiver』(英国では『Liar』だったようですが)、1997年、米、ジョナス&ジョシュ・ペイト監督作品。

同じ『The Thomas Crown Affair』でもS・マックィーン主演(『華麗なる賭け』)ではない方。サンドバギーの代わりにグライダーというように操り操られるものの関係がより動的に危機的に演出されていてテムポもいい。スティングが歌う「風のささやき」も。もちろん違う役柄だけどフェイ・ダナウェイが出ている。これで最後の最後に女性がニヤッと「してやったり」の表情あらましかば、うれしからまし(反実仮想)。1999年、米、ジョン・マクティアナン監督作品。

嘘をつけないこと=本当のことしか言えないことは、こんなにも苦しいのか。いや、見ているこちらは笑いが止められなくて苦しいのだが、それだけではない。身体を操ろうとする力と操られまいとする力との組んず解れつの闘争が、ここまで誇張された形で視覚化されると、さすがにこちらの身体にまでその力が動きとして乗り感染ってくる。照れ隠しなのだろうか、模倣衝動が抑え難いのである。いうまでもなく私はウソつきであるが、嘘つきな人ほど笑える映画である(これホント)。『Liar Liar』、1997年、米、トム・シャドヤック監督作品。