2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

山内志朗『〈つまずき〉のなかの哲学』

どこにも行かない このエネルゲイアの特質を整理し、分かりやすく説明しているのが、藤沢令夫の『イデアと世界』だ。そこでの重要な一節に以下のところがある。 時間の内になく、〈どこからどこへ〉によって規定されないとすれば、当然「速く」「遅く」をそ…

the four seasons4

行かぬ道あまりに多し春の国(三橋敏雄) 夏の山国母いてわれを与太と言う(金子兜太) 父もまた見てゐしといふ秋の虹(石田郷子) 晩冬が佳くて人間ひとりかな(高尾窓秋)

『恋愛睡眠のすすめ』

@京都みなみ会館。 アニメーション→『ユーリ・ノルシュテイン作品集』

若冲展

@相国寺承天閣美術館。 モチツツジ→つじのぶお 「動植綵絵」三○幅はかれの四○代を費やして完成され、相国寺に寄付された*1。細密で濃厚な彩色手法で描かれたこの連作には、さまざまな動植物が、写実と装飾、空想とアニミズムの交錯する不可思議な世界をつく…

the four seasons3

死は春の空の渚に遊ぶべし(石原八束) 闇よりも山大いなる晩夏かな(飯田龍太) 面面(めいめい)の石の隣が露の秋(安東次男) 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ(川崎展宏)

the four seasons2

猪(しし)が来て空気を食べる春の峠(金子兜太) たとへなきへだたりに鹿夏に入る(岡井省二) 石にのり秋の蜥蜴となりにけり(飴山實) 冬眠の蝮のほかは寝息なし(金子兜太)

the four seasons1

海に出てしばらく浮かぶ春の川(大屋達治) 韓国(からくに)の靴ながれつく夏のくれ(小澤實) 暗室の男のために秋刀魚焼く(黒田杏子) 冬深し柱の中の濤の音(長谷川櫂)

『ココシリ』

DVD

実話(1993-1996年のココシリ山岳隊 Kekexili Mountain Patrol−チベットカモシカの密猟者たちを追う民間パトロール隊の活動)に基づいた映画。その17日間に及ぶ追跡劇は、厳しい生存条件の下での矛盾に満ちた赤裸な人間(集団)の姿を浮き彫りにする。実際に…

『西田幾多郎』

へうへうとして水を味ふ(種田山頭火)p142 仏法は用巧(ゆうこう)〔効用・効果〕の処無し、ただ是れ平常無事、屙屎(あし)送尿〔大小便をすること〕、著衣喫飯(じゃくえきっぱん)、困(つか)れ来れば即ち臥(ふ)す」(『臨済録』)p156 廬山(ろざん…

スピノザ

『スピノザ エチカ(抄)』(佐藤一郎編訳)拾い読み。第一部、第二部、第五部が完訳、第三部、第四部は冒頭から途中まで(それぞれ命題一三まで、命題八まで)が訳出されている。

カミングス、池内了

he sang his didn't he danced his did ("lived in a pretty how town" by E. E. Cummings) 分岐した解の一方だけがなぜ選ばれたかは、内在する論理だけでは導けない 必然を徹底して行き止まれば偶然に託す (池内了『転回期の科学を読む辞典』*1) *1:『…

『ラストデイズ』

DVD

再見。名前がブレイクで、森を彷徨うと来て、一緒についてまわるのがノーバディ(だれもいない)だったら、ジャームッシュの『デッドマン』の隣りに並べてみてもいい映画なのかもしれない。けど殺し屋はいない。じゃあ彼は誰に追われているのか。自分自身に…

『エレファント』

DVD

いい加減な自分の記憶が気になったので再見。フォーカスが微妙で、たいていは行動している人物だけに焦点が合っていて、背景は大きくボケているのだが、他の人物との出会いや行動を共にする場面ではフォーカスのシャロウさはやや弛むし、急にストップモーシ…

『リベラル・ユートピアという希望』

主観と客観とのあいだにある現象というヴェール。しかし言語は、そのような私たち(の感覚器官あるいは精神)と実在(事物がそれ自体であるあり方)とのあいだにある障壁ではない、と著者はいう。 現象のヴェールにかんする十七世紀の議論に対するプラグマテ…

『明日、君がいない』

@テアトル梅田。音響。幼稚園だろうか、幼い子供たちのはしゃぎ声が聞こえてくる。 ガス・ヴァン・サント『エレファント』 「エレファント」との大きな違いは、登場人物たちの顔をアップで撮ったモノクロのインタヴュー映像が(複数の視点に加えて、複数の…

『僕と未来とブエノスアイレス』

DVD

少年が公園に座っていた 拳を握りしめた1人の少年 なぜか不安そうに震えている 彼の左手が震えている 少女が少年に言った お願いだからそんなにジラさないで 私をしっかりと抱きしめて あなたの右手で抱きしめて 少年は少女に言った そんなに怒らないで 僕…

『鈴木先生1』『鈴木先生2』

前の男の幻影に苦しむのではない。女が娼婦であることに怯えるのだ。貨幣ではないかと。あるいはストックの、フローに対する嫉妬。

『君とボクの虹色の世界』

DVD

アブナイね。でも、つながりが望めるのなら。

『ラッキー・ブレイク』

DVD

抑圧からの解放だったら、最後まで明るいこっちの方かな。刑務所からの脱走が人間として正しい振る舞いであるようにさえ思えてくるのは、悪意をもった刑務官がいるせいだけではない。きっと囲い込まれたらそれだけで抜け出したくなるのだ。だから刑務官との…

『マッチポイント』

DVD

「昔テニスボーイ」の憂鬱。ボールがネットの手前に落ちたように、指輪も欄干の手前に落ちたので、これはてっきりと思っていたら、反対の結果に。しかしピカレスクというには主人公が(ドストエフスキーの小説を読んでるのもそうだし、チャップリン『殺人狂…

『洞窟へ』

洞窟へ―心とイメージのアルケオロジー作者: 港千尋出版社/メーカー: せりか書房発売日: 2001/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (38件) を見る 再読。とくに4章 記憶のシステム、5章 脳と洞窟、6章 美しき動物たち。洞窟こ…

『リトル・イタリーの恋』

DVD

オーストラリアのイタリア移民の兄弟たちが、お互い以外にも愛する対象をそれぞれに見つける話。移民した人たちが本国の同胞たちと写真や手紙のやりとりをして、それだけを頼りに判断をして婚約を決めていた時代。しかしいつの時代であれ、だれかとの愛や何…

『自然 まだ見ぬ記憶へ』

ロダン展@兵庫県立美術館にいってきた。収穫だったのは、ロダンがいわばモジュール的発想の作家だったという発見である。人体の部分(とくには手あるいは四肢)を別の人体に、またその人体を二つ三つ組み合わせてみたり、もっと配置して群像にしてみたり。…

『イメージ、それでもなお』

伝達不可能なものを、それでも伝達するために、どうするか。イメージに対する「不可視性」についての過度な一般化に抗して、イメージ=ヴェールではなく、イメージ=裂け目のほうに賭けてみよう、とディディ=ユベルマンはいう。たとえば地獄(ビルケナウ絶滅…

『約束の旅路』

@第七藝術劇場。 たくさんの母に愛されることの幸運とたくさんの母を愛することの幸福を描く。母だけでなく父も複数用意されていて(「故郷」の複数性)、養父、養祖父、ラビといった「父」たちとの協働によって誇り(自立)、分かち合い(共生)、正義(他…