haiku
黒い太い夜ごと墓石を揉む右手
死は春のかすみ誰にもなりにけり 面面の柱の中の春の国 行かぬ道夢見しあとか春の川 夢見るか空気を食べる夏に入る 鈴に入る六十年後の晩夏かな 掌かへしてゴッホ夏の土 猪が来てしばらく浮かぶ露の秋 秋昼寝一行の詩は与太と言う 少年や蝮のほかは秋の虹 冬…
行かぬ道あまりに多し春の国(三橋敏雄) 夏の山国母いてわれを与太と言う(金子兜太) 竹生島へ妻子を送り秋昼寝(田中裕明) 晩冬が佳くて人間ひとりかな(高尾窓秋) 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ(川崎展宏) 死は春の空の渚に遊ぶべし(石原八束) 闇…
行かぬ道あまりに多し春の国(三橋敏雄) 夏の山国母いてわれを与太と言う(金子兜太) 父もまた見てゐしといふ秋の虹(石田郷子) 晩冬が佳くて人間ひとりかな(高尾窓秋)
死は春の空の渚に遊ぶべし(石原八束) 闇よりも山大いなる晩夏かな(飯田龍太) 面面(めいめい)の石の隣が露の秋(安東次男) 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ(川崎展宏)
猪(しし)が来て空気を食べる春の峠(金子兜太) たとへなきへだたりに鹿夏に入る(岡井省二) 石にのり秋の蜥蜴となりにけり(飴山實) 冬眠の蝮のほかは寝息なし(金子兜太)
海に出てしばらく浮かぶ春の川(大屋達治) 韓国(からくに)の靴ながれつく夏のくれ(小澤實) 暗室の男のために秋刀魚焼く(黒田杏子) 冬深し柱の中の濤の音(長谷川櫂)