『太陽に恋して』

冴えない教育実習生ダニエル(モーリッツ・ブライプトロイ)は、彼を密かに慕う露店商のユーリ(クリスティアーネ・パウル)から太陽の指輪を売りつけられ、パーティに誘われる。「彼は出てくるのを待ってる何かをその奥深くに持ってるのよ」。しかしそこで出会ったのはメレク(イディル・ユネル)というトルコから来た女性だった・・・。
ハンブルグからイスタンブールへ。運命の女性と再会するための旅を通して青年が人間的に成長するというお話だが、そのご都合主義的な展開(国境の簡易トイレから・・・、が代表だろうか)や漫画的な描写(最初のスプレーの場面、ドラッグによる浮遊感の描き方、etc)がしかしそのまま面白くて、笑える、愉快なロードムーヴィーになっている。土地柄と移動の両方を反映させているような音楽もいい。

われわれの生活は半分は痴愚の中に、半分は知恵の中にある。人生を敬虔に、立派にしか描かない人は、その半分以上を後に置き忘れている。(モンテーニュ『エセー(五)』原二郎訳、岩波文庫、一九六七年、一八六頁。)*1


ルナ役のブランカ・カティッチは妖し可愛く(ジョルジュ・メリエス月世界旅行』へのオマージュシーンあり)、一見強面ふうイザ役マフメット・クルトゥルスの一転「じつはいいヤツ」ぶりの演出・演技にもどこか飄逸なところがあって、ついつい顔が緩んでしまう。『愛より強く』のビロル・ユーネルがちらっと出てくるし、ルーマニア国境警備員役で監督自身も顔を出している。
『IM JULI』(英題『IN JULY』)、2000年、独、ファティ・アキン監督作品。

*1:植島啓司偶然のチカラ』(p142)から孫引き。