『力道山』


この映画のいいところは、史実から自由になって、しかし「力道山」をたんなる時代の英雄としても、また闇の力に抗いきれなかった悲劇のヒーローとしても描かなかったところだと思う。もちろん個人の性格のせいだとも、その出自のせいだとも、時代の制約のせいだとも決めつけてはいない。世界人として生きること、力のある大きな人間として生きること、笑って生きることの素晴らしさを垣間見せながら、じっさいにはその難しさこそが、ここにはある。時代も違うし、したがって問題の質も当然異なる部分が多々あるとしても、「力道山」に「朝青龍」の小さな影を、ちらっと見る思いがしたのも事実である。
『Yeokdosan』、2004年、韓・日、ソン・ヘソン監督作品。