『帰ってきたヨッパライ』


海岸砂丘の最初の場面からヴェトナム戦争の有名なある写真が頭に浮かんだのだが、最後にやっぱり出てきた。写真ではなく途轍もなく大きなペンキ絵としてだが、それが回り舞台の書き割りになっていて、手前では映画の登場人物たちの処刑が、実際にその絵をなぞるように行われるのだ。ゆがむ顔、ゆがまない顔。電車の窓からそれを見るフォーク・クルセダーズの面々たちとの切り返しが続くシーンは、なんとも切なく歯痒い気持ちにさせられる。卒業旅行の旅先である福岡県の海岸で、ヴェトナム戦争行きを拒んで韓国から密入国してきた軍人と高校生の二人に拳銃を突きつけられ、身代わりの死体にされそうになる脳天気な日本の大学生三人。場合分けされて羅列される命の値段。無視するように笑うしかない若者たち。フォークルの歌の英題は「I Only Live Twice」らしいが、くり返される時間を生きる彼らが、押しつけられた韓国人の役割を真に受けることで、そのアイデンティティの混乱を逆手にとって、互いの優劣の立場を逆転させてみたりなど、深刻かつ笑える状況が連続する。歌にある「なあ、お前〜」の神様のセリフが蘇ってくるようだ。過去に経験したはずの時間は反省が可能で、したがって理想の現在に向けてそれを活かせそうにも見えるのだが、なお活かせはしないという現実。
1968年、日、大島渚監督作品。