『ジェリー』GERRY(2002年、米、ガス・ヴァン・サント監督)

上の映画を見た人は、この映画を思い出したかもしれない。荒野を彷徨うことになる若者二人が、最初に見知らぬ家族連れと挨拶だけを交わしてすれ違う場面がある。最後に残った一人の若者が、とうとう道路に出ることができて、拾ってもらって乗っているのは乗用車の後部座席で、そこから青年は自分がついさっきまで飲まず食わずのまま3日も歩き回っていた荒野を見つめている。その視線がふと反対側に移る。カメラがその目線で映し出すのは、隣に座って反対側の窓の向こうを見ている小さな男の子である。車を運転している少年の父親らしい中年男性がバックミラーで青年の様子を確かめる。カメラがぐるりと一回りしたかのように画面に青年の顔が戻る。若者はじっと外を見ている。その青年の視線を追うように再び荒野を映し出すカメラ。2という関係の不安定さと3という関係の安定性、だろうか。車の中でも見知らぬ青年を後部座席に一人にしたり、あるいは幼い男の子だけを一人後ろに残したのでは得られない、微妙な安定感が、ここにはある。
まだまだこれからを生きる者に、もっともっとこれからを生きることになるさらに新しい生命へと向けられた視線が(幻影としてではなく)挟まれていたことが、何というか、生きるということに含まれてしかるべきものとして、それは映されていたのだろうか、などと考えていて、思い出し、そしてもう一度見てみたいと思ったのが下の映画である。

ジェリー デラックス版 [DVD]

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