『ソクーロフとの対話』


ソクーロフとの対話―魂の声、物質の夢

ソクーロフとの対話―魂の声、物質の夢


一度も秩序のある知的な権力をもったことのないロシア、一度たりとも経済の開花がなかったロシア、間断なく戦争をしている国家ロシア、生活思想のなかにオプティミズムの大変少ないロシア、石を自然の永遠性のシンボルとするロシア、そしてチェチェン戦争にも無反応だったロシア国民。「誰がそこへ行くか」の神の呼びかけに「私が行きます」と戦地であるタジキスタンに赴き「人間の倫理、その人の道徳は、瞬間に測られる」(p144)と語る映画監督。

私たちが語り合っていることに直接関係する興味深いロシア語の言葉があります。ロシア語で永遠性という言葉は一つの動詞−−ペレチカーチ(Peretikatj)に結びついています。過去が現在の日々、時に流れ移る(ペレチカーチ)時、永遠性となるチャンスが訪れます。ペレチカーチとは、"平らかに流れ込む"、二つの流れがこちらの流れに流れ込むという意味の動詞です。ペレというのは繰り返すという意味で、繰り返し流れ込むという意味を同時に持ちます。/世界について哲学的に考える時、この動詞は最も重要だと思えます。この動詞は"革命の道"ではなく"進化の道"を具象化しています。にもかかわらず人間は現実に進化の法則を基盤にして、現実に生き、動くのはむずかしいのです。人間は革命的なイメージ−−速いテンポで生き、変化させることを求めるのです。しかし革命的な様相(イメージ)(=手法)によってすべてを変えることは不可能です。これは基本的に重要なことだと思えます。p132-133