『恥辱』

恥辱にまみれているのは、彼女たちだけではない。忍びよる老いと、それでも枯れることのない欲望を同時に抱えながら、古い世界に戻るわけにもいかず、生きていくべき新しい場所を見つけなければならない姉や父もまたそうなのだ(もちろん二人には違いもある。たとえば動物の生命に対する共感、反人間主義的な視点は、父にだけあって姉にはない)。妄想は姉を救ったのだろうか、そしてオペラは父を救うのだろうか。


恥辱

恥辱


妹は「ここには二度と戻らない」と口にはしてみせている。娘は「持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」(Like a dog) それでもその場に踏みとどまろうと決意している。しかしいずれにせよ、そこに「国家」の力は届かないのだ。彼女たちの「自己」や「家」は、どのように可能なのだろうか。