memo

金森修『ベルクソン』

自由 確かに、僕らの知覚はその背後からどんどん湧き出してくる記憶の圧力に押され続けている。僕らは、いまこの瞬間を見ているようで、実はいままで何度も見てきたもののようにそれを見、いままで何度も聴いてきたもののように、それを聴いている。その意味…

山内志朗『〈つまずき〉のなかの哲学』

どこにも行かない このエネルゲイアの特質を整理し、分かりやすく説明しているのが、藤沢令夫の『イデアと世界』だ。そこでの重要な一節に以下のところがある。 時間の内になく、〈どこからどこへ〉によって規定されないとすれば、当然「速く」「遅く」をそ…

the four seasons4

行かぬ道あまりに多し春の国(三橋敏雄) 夏の山国母いてわれを与太と言う(金子兜太) 父もまた見てゐしといふ秋の虹(石田郷子) 晩冬が佳くて人間ひとりかな(高尾窓秋)

the four seasons3

死は春の空の渚に遊ぶべし(石原八束) 闇よりも山大いなる晩夏かな(飯田龍太) 面面(めいめい)の石の隣が露の秋(安東次男) 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ(川崎展宏)

the four seasons2

猪(しし)が来て空気を食べる春の峠(金子兜太) たとへなきへだたりに鹿夏に入る(岡井省二) 石にのり秋の蜥蜴となりにけり(飴山實) 冬眠の蝮のほかは寝息なし(金子兜太)

the four seasons1

海に出てしばらく浮かぶ春の川(大屋達治) 韓国(からくに)の靴ながれつく夏のくれ(小澤實) 暗室の男のために秋刀魚焼く(黒田杏子) 冬深し柱の中の濤の音(長谷川櫂)

『西田幾多郎』

へうへうとして水を味ふ(種田山頭火)p142 仏法は用巧(ゆうこう)〔効用・効果〕の処無し、ただ是れ平常無事、屙屎(あし)送尿〔大小便をすること〕、著衣喫飯(じゃくえきっぱん)、困(つか)れ来れば即ち臥(ふ)す」(『臨済録』)p156 廬山(ろざん…

スピノザ

『スピノザ エチカ(抄)』(佐藤一郎編訳)拾い読み。第一部、第二部、第五部が完訳、第三部、第四部は冒頭から途中まで(それぞれ命題一三まで、命題八まで)が訳出されている。

カミングス、池内了

he sang his didn't he danced his did ("lived in a pretty how town" by E. E. Cummings) 分岐した解の一方だけがなぜ選ばれたかは、内在する論理だけでは導けない 必然を徹底して行き止まれば偶然に託す (池内了『転回期の科学を読む辞典』*1) *1:『…

『リベラル・ユートピアという希望』

主観と客観とのあいだにある現象というヴェール。しかし言語は、そのような私たち(の感覚器官あるいは精神)と実在(事物がそれ自体であるあり方)とのあいだにある障壁ではない、と著者はいう。 現象のヴェールにかんする十七世紀の議論に対するプラグマテ…

『時をかける少女』

「東京猫の散歩と昼寝」http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20070421に「偽日記 07/04/20に『時をかける少女』をDVDで見たとある。私も同日だったので(……)http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/nisenikki.html」とあって、じつは私も「同日だったので」驚…

『近代化と世間』、人間狼、フーゴー

個人、自然、公共性、アジール、聖なるものへの憧憬などの考察を手がかりにして西欧社会の特性を論じ、そこでの賤民の成立と解体を社会史的視点から概括的に辿る第一章、日本の「世間」が分析される第二章、東西の歴史学の現状が比較検討される第三章、トイ…

遠吠え

ラフカディオ・ハーンに、彼が越してくる以前からその家に居着いて(なんだか猫みたいだが)、代々の借家人を守ってきた、白い雌犬について書いた文章がある。見知らぬ人間以外の誰もに好かれる、半年ごとに野犬狩りがまわってくると、近所の人たちが守って…

家茂参内に関する資料にまつわる思い出とともに

岩波「図書」3月号にSOASでお世話になった日本学のジョン・ブリーン(John Breen)先生の文章が載っている。「イギリスの「王子文化」と『星の王子さま』」と題するもので、なぜ『星の王子さま』が児童文学の傑作としてイギリスに定着しなかったか、につい…

岡田温司『処女懐胎』

見えないものが見えるようになり、手の届かないものが手の届くものになりうる。他の一神教とはちがって、多くの偶像を生み出すことになった、キリスト教の根底にある「受肉」という考え方が、なんとも興味深い。本書では、キリストの「家族」が、ではどのよ…

四方田犬彦「先生とわたし」(『新潮』3月号)

読了。「すべてデタラメ」。この言葉をしかし、自分に言ってくれる人はもういない。わたし自身に引きつけて読むと、感想はそうなる。もっとも、わたしの場合、師に嫉妬されるほどの弟子では、決してなかった。あるいは、わたしの師は、ここでジョージ・スタ…

[book]『マリー・アントワネット』追記、『ヘーゲル読解入門』、『東京から考える』

[映画のあとの、三人のまとまらない会話]K「フランス語、聞きたかったなぁ」 S「ちょっと遊園地っぽくなかった?」 T「結婚させられた少女が、なんとか母親になれて、自ら妻にもなって、やっと自分自身になることができたって感じにはなってたよね」 S…

『恥辱』(追記)

MSKが職場の図書館から借りてきたという「欲望という名の電車」を一緒に見たのは先週末。この映画はずいぶん久しぶりで、マーロン・ブランドの登場する幾つかのシーンを除くと、ラスト以外はほとんど覚えていなかったくらい。で、先日来図書館で借りてい…