金森修『ベルクソン』

  • 自由

 確かに、僕らの知覚はその背後からどんどん湧き出してくる記憶の圧力に押され続けている。僕らは、いまこの瞬間を見ているようで、実はいままで何度も見てきたもののようにそれを見、いままで何度も聴いてきたもののように、それを聴いている。その意味で、僕らは事実上、自分の過去の奴隷のようなものだ。しかし、それは絶対にそうでなければならない、というわけはない。なぜなら、空間化された時間ではなく、本当の時間とは瞬間瞬間に産出能力を備えたものだからだ。p96-97