山本義隆『一六世紀文化革命1・2』asin:4622072866

070703.gif


印刷革命、言語革命を中心に漁り読み。ルネサンス期にはスコラ学とも人文主義とも異なる文化潮流が生まれていた。文書偏重の学から経験重視の知へ、あるいは定性的自然学から定量的物理学へ、これら17世紀の科学革命につながる態度変更を実質的に担ったのは、16世紀のラテン語を知らない芸術家や職人や商人たちであり、彼らがおのれの仕事の内容や成果を自分たちの言葉で表現しはじめたこと、すなわち俗語による出版によって、それまで閉め出されていた文字文化・学問世界に、越境しはじめたことが決定的であった。14,15世紀のルネサンスと17世紀科学革命のあいだの谷間のように見られる16世紀に、文化革命は進行していたのである。なお、本書ではE・アイゼンステインの研究(たとえば『印刷革命』asin:4622018993)には数箇所で、またL・フェーブル&H-J・マルタンの著作(『書物の出現』asin:4480084428)にも、ふれられているものの、(その文学的なスタイルのせいか、あるいは地域性の問題からか)M・マクルーハンやB・アンダーソンの著作(たとえば『グーテンベルクの銀河系asin:4622018969や『想像の共同体』asin:487188516X)への言及はない。