『武士の一分』

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@伊丹TOHOプレックス。山田洋次監督&藤沢周平原作による時代劇の三作目は、夫婦愛が中心に描かれていて、その点だけを見るとほとんど現代劇。木村拓哉の軽さが活きています。監督はこの人の目がお目当てだったのかな。見えない人という設定ですから、その目をしっかり撮ることができます。檀れいは画面どおり腰が据わっているな、という印象。桃井かおり(軽薄)、笹野高史(実直)、坂東三津五郎(スケベ)らもいい。決闘シーンはわざと寄ってないんでしょうね。全体のなかでそこがむしろ際立たないようにしている感じで、たぶん徳平がそばで心配する素振りのシーンや剣術の師匠相手の練習シーンとに三分されている。それで三村新之丞に軽口と笑顔が戻るという流れがより自然になる。理不尽な力に対して死なないで生きて一矢(一太刀)を報いる。それだけなら武士でなくてもいいのかも知れないが、武士だからこそとどめを刺さず、相手に腹を切らすことができたということだろうか。勝負がつく寸前、主人公が見えない目を閉じるシーンが印象的でした。