『地中海』


地中海―人と町の肖像 (岩波新書)

地中海―人と町の肖像 (岩波新書)


環地中海という「場」を「人」を通じて描く。
歴史、科学、聖者、真理、予言、景観。
ヘロドトスイブン・ハルドゥーンアルキメデスプトレマイオス、聖アントニウス&聖ヒエロニムス、イブン・ルシュド(アヴェロエス)&マイモニデス、ヨアキム&ノストラダムス、カナレット&ピラネージ。
5000年にわたるその輝きを、6つのテーマで、1テーマに2人ずつを選ぶかたちで。

 ……こののち、イスラーム世界でイブン・ルシュドが話題となることは、ほとんどない。むしろ、じつはイブン・ルシュドの著作が、ユダヤ教徒によりしばしば引用されるという奇異な事態がおこる。ユダヤ教の世界にあっては、マイモニデスのアリストテレス読解が優勢をしめ、これと類似の軌道をはしるイブン・ルシュドが関心をよびおこしたからである。
 一見するとはなはだ異様な事態は、さらに先にすすむ。イブン・ルシュドの著作が、まずはトレドで、ついではシチリアや北イタリアでラテン語に翻訳され、キリスト教の理論家にたいして、重大な衝撃をあたえるにいたった。そして、この翻訳事業は、思わぬところから、重大な展開をうながした。思わぬとは、当のイブン・ルシュドやマイモニデスがすでに世を去って四○年ちかく、当人には想像もつかないところで、その教説が読みつがれたからである。ふたりの故国であるコルドバキリスト教徒の手におちた一二三○年代、ふたりの哲学はまったくの異郷であるフランスの首都パリで、閃光とともによみがえった。p140


ルネサンスの裾野は、さすがにデカイなあ。


ルネサンス (講談社学術文庫)

ルネサンス (講談社学術文庫)