『カーサ・エスペランサ 赤ちゃんたちの家』



北米あるいはアイルランドから、それぞれの事情を抱えた6人の女性が、南米(メキシコ?)に養子縁組にきている。
手続きは思うように進まない。
同じホテルに長く滞在する彼女たちは、次第に互いを知るようになる。


ホテルのメイドであるアスンシオン(ヴァネッサ・マルティネス Vanessa Martinez)とアイリーン(スーザン・リンチ Susan Lynch)のふたりが、お互い相手の言葉はカタコトしか理解できないながら、思いのたけを述べあうシーンが印象的。
アイリーンは子供と一緒の世界を、実際に母親を生きている女たちにとってはごく当たり前の、しかしそれだけにそのありがたさを忘れがちな、ささやかな日常の幸福について、こまやかに想像してみせる。
「……冬の初め、雪の季節、ボストンの冬は厳しいの。ここは雪が降らないわね。」
「雪、ネバダね。」
「そう、州の名前と同じ。雪が降ると学校が休みになるの。イッツ・ア・スノー・デイ。だから娘は起こさない。彼女は幼いけれど、もう小3。ゆっくり寝かせるわ。部屋に入ると娘は丸くなってすやすや眠っている。そして私は言う。ダーリン、イッツ・ア・スノー・デイ。だからゆっくり寝てなさい。歯を磨く時間だけど、今日は大目に見てあげる。とうとう彼女は起きて、パジャマ姿で現れる。そして私はココアをつくり、マシュマロを浮かべる。それから二人でその日に何をするかを話すの。外ではスノー・シャベルの音が聞こえる。除雪車が唸りながら雪をはきのけ、そして雪は降り続いて、周りはすべて真っ白の世界。私は娘に重ね着させる……」
「わたしは……」と、今度はアスンシオンが語り始める。
「北に娘がいます。名前はエスメラルダ。4月9日で4歳になる。雪の降るところに住んでいるのかもしれない。わたしも若かった。弟や妹がいて、彼らの世話をしながら仕事をしている。修道女がやってきた。こういった。養子に出すのがいちばんだ。母親希望の新しいグループが来るたびに、わたしは一人を選ぶの。いい人を。そして娘の養母の顔を想像してみる。その声も。エスメラルダを想う。養母と一緒だって、あなたのような人だといいけど。」