濃霧

池いっぱいに溜まった水のように盆地を埋めた濃い霧だった。高く煙った霧の中空からぬっと太陽が現れた。輪郭もくっきり。ふだんなら直視することのできない角度にまで昇った太陽が鮮やかなオレンヂ色をして。まん丸からやがて半分のそれになりするうち雲間に消えて、再び現れることはなかった。まぼろしと見紛うような、王寺駅から法隆寺駅の間、列車の窓からの光景。昨夜七草粥を美味しくいただいたのを突然思い出す。