『ヒトラー 最期の12日間』


ヒトラー?最期の12日間?エクステンデッド・エディション<終極BOX> [DVD]

ヒトラー?最期の12日間?エクステンデッド・エディション<終極BOX> [DVD]


昨年映画館で見て、ここにも感想を書いたことのある映画。同僚のドイツ語教員であるKRKWさんから「白バラの祈り」(これもこのあいだ映画館で見た)のDVDと一緒に借りた。劇場版(155分)を編集し直して二部構成の175分にエクステンドした本編(Disk1)に特典映像222分(Disk2)とドキュメンタリー映画「トラウドゥル・ユンゲ 私はヒトラーの秘書だった(英題「BLIND SPOT」)」87分(Disk3)を加えた3枚組。再編集で、より原題「DER UNTERGANG」にふさわしい映画になったかな、という印象。ヒトラー個人を中心とした劇ではなく、彼の周辺の人々やごく普通の市民までを含めた群像劇に仕上がっていて、そのためにかえってヒトラーという「人間」が気になり、感情移入もしやすくなったように思えたし、崩壊のうちにも再生が、芽生えとしてしっかり組み込まれていることも、よく見えた気がした。
本編の始めと終わりは、映画「トラウドゥル・ユンゲ 私はヒトラーの秘書だった」から採られたトラウドゥル・ユンゲの短い証言映像でもって挟まれているのだが、ラストにゾフィー・ショル(「白バラの祈り」)にからんだ発言がある。彼女と同年生まれのゾフィーは、トラウドゥルがヒトラーの秘書になったその年に処刑されていた。のちにそのことを知ったトラウドゥル・ユンゲは「若かったというのは、言い訳にならない。目を見開いていれば気づけたのだ」といってみせるのだが、これには映画の原題「IM TOTEN WINKEL」が皮肉に響く。
今回加わったシーンの一つ、ソ連軍の女性兵士たちが地下壕のエヴァの居室から彼女の衣装を奪い合ったあとに、ゲッベルスの子どもたちの亡骸を発見してしまう場面も印象的だったが、やはりいいなと思ったのは、ベルリンからの逃走を図った仲間たちを包囲したソ連軍兵士の群れから、女性なら大丈夫と自分だけ抜け出ようとして、しかし途中で立ち往生してしまったユンゲ、そこにヒトラー・ユーゲントだったペーター少年が現れて彼女の手をとるシーンだ。自転車を見つけた少年を見守る彼女の笑顔、ペーターを乗せてペダルを漕ぐトラウドゥルの頬にあたる夕暮れの優しい光。ロシアのサンクトペテルブルクがロケ地であったことも、初めて知った。