『アニメーションの世界へようこそ』



この本は、奈良高専の図書館にもあります。

 「影絵アニメーション」の先駆者は、ドイツの女性作家ロッテ・ライニガー(一八八九〜一九八一)です。日本では、『くじら』(一九五三)や『幽霊船』(一九五六)という作品の作者で、カラーセロファンで色付きの影絵を動かした、大藤信郎(一九○○〜六一)がいます。
 「切り絵アニメーション」では、カラフルなパステル画をオペラに合わせて軽やかに動かす、イタリアのエマニュエーレ・ルザッティ(一九二一〜)とジュリオ・ジャニーニ(一九二七〜)の二人組、不透明な絵の具(ガッシュ)を使った繊細な絵で静かで幻想的な世界を描くフランスのジャン=フランソワ・ラギオニ(一九三九〜)、世界最高のアニメーション作家ともよばれる、『霧の中のはりねずみ』(一九七五)や『話の話』(一九七九)などの繊細で精密で詩的で美しい作品を生み出す、ロシアのユーリ・ノルシュテイン(一九四一〜)らの作家がすばらしい仕事をしています。
 また、アレクサンドル・アレクセイエフ(一九○一〜八二)の「ピン・スクリーン」という、ピンの長さで濃淡を作る特別な技法は、このピン・スクリーン自体が世界に一つしかないとても珍しいものです。現在は、カナダのジャック・ドゥルーアン(一九四三〜)が継承しています。
 砂をガラス版に広げて下から光をあてて絵の濃淡を作る「砂アニメーション」は、アメリカ生まれのキャロライン・リーフ(一九四六〜)が始めて、最近では、ハンガリーのフェレンク・カーコ(一九五○〜)やアビ・フェイジオなど多くの作家が使っています。色を付けた「塩」を動かす作家としてはアレキサンドラ・コレジオがいますし、他にも「砂鉄」「インスタント・コーヒー」などの材料のバリエーションがあります。
 世界中の大きな賞を受賞している『木を植えた男』(一九八七)の作者、カナダの巨匠フレデリック・バック(一九二四〜)のアニメーションは、色鉛筆によって描かれています。
 一九九九年、『老人と海』でアカデミー賞を受賞しているロシアのアレキサンドル・ペトロフ(一九五七〜)は、ガラスの上で油絵の具を使って描いていく「ペイント・オン・グラス」の手法で、油絵で描かれた濃厚な絵が動くアニメーションによって色々な文学世界を表現しています。
 はじめに触れた、カナダのノーマン・マクラレンは、フィルムに直接絵を描いたり、引っ掻いたり、人間をコマ撮りした「ピクシレーション」や、パステル画を消しては描く「パステル・メソッド」など、さまざまな技法で多くの傑作を制作していて、そのバリエーションは数え上げたらきりがありません。p40-44


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