『対論 彫刻空間』


対論・彫刻空間―物質と思考 (Le livre de luciole (42))

対論・彫刻空間―物質と思考 (Le livre de luciole (42))


前田英樹に対する若林奮の発言。

私は彫刻に「振動」という言葉を考えます。これは前田さんのおっしゃる生命的な水準の一部分と考えられます。私はこの振動の一端しか知らないのです。それは振動と私とが接するところです。振動が充満する空間は狭く小さいことによって成り立っていると思えます。そして次に「所有」という考えが出てきます。彫刻は全体像を明確に獲得するのではなくて、振動を持った曖昧な空間を所有する、と私には考えられます。自分と振動を持った空間との関係が生じて、その関係によって認められ、その接点、接するところが見極められていくと思えるのです。p67