『美しい人』

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@テアトル梅田。
『ビッグ・リバー』は、夜9時すぎからの上映分しかなかったので。
予備知識なしで見た。
原題は『Nine Lives』、ロドリゴ・ガルシア監督。
9人の女性の9つの挿話をワンシーン・ワンカットで。
一応それぞれに独立した話なんだけど、人物たちは微妙につながっていたり。
繊細な心の動きとはいえ、感情過多気味になる場面が多いだけに、最後におかれた墓地でのグレン・クローズダコタ・ファニング母娘の閑雅な交感のエピソードが印象的。
というかこの映画、第8話に第1話につながる部分があるせいか、よけいに第9話が独立している感じが強くなる。
そこで振り返ってみると、どの話にも「ループ的な時間」とそこからの「はみだし」が描かれていたような。
映画全体のなかでの第9話がそういう「はみだし」的な位置にあって、この話のなかでもやはり「円環的な時間とそれからの逸脱」が扱われているので、つまりはここで問題は二重にかさなっている。
その最後の最後に「はみだし」が、あっという驚きとともに消えて/見えて、それでさらに美しさの印象があらたまる。
(すすり泣きの声も聞こえました。)
映画を見終わって浮かんできたのは次のような言葉。


九つの悲しみはそれぞれに
あまりにもひそやかなものだったので
静けさまでもがやってきた
黄昏はいつでもとっくに始まっていて
それまで主のようにここにいたものたちが
いまは客のように立ち去ろうとしていた
こんなふうに九つの生命はそれぞれの
光につつまれ軽やかに逃げていった
美しきもののなかへ


ぜんぜんちがいました、ほんとうはこれ。

'As imperceptibly as Grief'


As imperceptibly as Grief
The Summer lapsed away --
Too imperceptible at last
To seem like Perfidy --
A Quietness distilled
As Twilight long begun,
Or Nature spending with herself
Sequesterd Afternoon --
The Dusk drew earlier in --
The Morning foreign shone --
A courteous, yet harrowing Grace,
And Guest, that would be gone --
And thus, without a Wing
Or service of a Keel
Our Summer made her light escape
Into the Beautiful.


エミリ・ディキンソンには対訳本があります。

対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選〈3〉 (岩波文庫)

対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選〈3〉 (岩波文庫)